肺がんの死亡率や死亡者数は?その他の死亡率が高いがんについても紹介

肺がんの死亡率と死亡者数

肺がんは日本人のがんによる死亡原因の中で最も多い割合を占めています。まずは肺がんの死亡率と死亡者数について、統計データをもとに解説します。
肺がんの死亡率と死亡者数は他のがんと比較して高い傾向にある
2023年の統計によると、肺がんによる死亡者数は75,762人で全がん中で最も死亡数が多いがんです。*人口10万人あたりの死亡率は62.5人であり、多くの人が肺がんで亡くなっているとわかります。
肺がんは、死亡者数だけでなく罹患者数も上位のがんです。2021年の統計では、肺がんの罹患者数は男女計で124,531例と、全がんの中で2位でした。*罹患する人の多さも、肺がんの死亡者数の多さにつながっていると考えられます。
男性の場合最も死亡率の高いがんは「肺がん」
肺がんの統計を男女別に見ると、2023年の肺がんの死亡数は男性が52,908人、女性が22,854人です。*1
がん死亡数の順位は男性では1位、女性では2位であり、特に男性の死亡数が多いとわかります。男性においては死亡数2位の大腸がんが27,936人と、肺がんの死亡者数とは倍近くの差があります。
肺がんによる男性の死亡数の多さには、喫煙率の高さが影響していると考えられるでしょう。2023年の成人喫煙率は男性25.6%、女性6.9%です。*2
喫煙する量や年数が多いほど肺がんのリスクが上がるとされているため、喫煙率が高い男性のほうが肺がんの罹患者・死亡者が多いと考えられます。
*2 健康ネット | 最新タバコ情報 | 成人喫煙率(厚生労働省国民健康・栄養調査)
肺がんによる死亡率は年齢とともに高くなっていく
肺がんによる死亡率は、年齢とともに上昇していく傾向があります。たとえば、2023年における年齢層別の肺がんの死亡率は以下の通りです。*
【男性(人口10万人対)】
| 年齢 | 30歳から34歳 | 35歳から39歳 | 40歳から44歳 | 45歳から49歳 | 50歳から54歳 | 55歳から59歳 | 60歳から64歳 | 65歳から69歳 | 70歳から74歳 | 75歳から79歳 | 80歳から84歳 | 85歳以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 死亡率 | 0.2 | 1 | 1.9 | 5.4 | 12.5 | 26.9 | 61.9 | 128.3 | 232.9 | 332.2 | 427.5 | 593.9 |
【女性(人口10万人対)】
| 年齢 | 30歳から34歳 | 35歳から39歳 | 40歳から44歳 | 45歳から49歳 | 50歳から54歳 | 55歳から59歳 | 60歳から64歳 | 65歳から69歳 | 70歳から74歳 | 75歳から79歳 | 80歳から84歳 | 85歳以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 死亡率 | 0.4 | 0.7 | 1.7 | 2.7 | 5.8 | 10.6 | 21 | 35.1 | 62.7 | 93.8 | 124.8 | 195.1 |
男女ともに50代から死亡率が増加し始め、特に男性では60代から大幅に上昇します。一般的に高齢の人ほどがんにかかりやすくなるのに加え、肺がんでは長年の喫煙や大気汚染へのばく露も影響して、死亡リスクが高まると考えられます。
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肺がんの余命や5年生存率
肺がんを含め、がんの余命の目安としては「5年生存率」という指標が広く用いられています。5年生存率には計算方法による種類があり、従来から使用されてきた「実測生存率」「相対生存率」に加え、近年では「純生存率(ネット・サバイバル)」もよく使われる数値です。
・実測生存率:ある病気と診断された人の中で、一定期間後に生存していた人の割合。死因を考慮せずに実測値で計算する。
・相対生存率:実測生存率の値を、同じ特性(年齢・地域・性別など)を持つ集団の生存率を踏まえて調整した生存率。ほかの死因の影響を小さくできる。
・ネット・サバイバル:ある病気以外の死因がなかったと仮定して計算した生存率。相対生存率よりも、さらにほかの死因の影響を小さくできる。
2014年から2015年に肺がんと診断された人の5年実測生存率は40.4%、ネット・サバイバルは44.4%でした。*1
ステージ別では、以下の通りです。
| 実測生存率 | ネット・サバイバル | |
|---|---|---|
| 1期 | 74.0% | 81.5% |
| 2期 | 46.2% | 51.0% |
| 3期 | 26.6% | 28.6% |
| 4期 | 7.4% | 8.0% |
同集計によると、全がん合計のネット・サバイバルは66.2%でした。*2
肺がんの生存率は緩やかに上昇しているものの、ほかのがんと比較して高い値ではないといえるでしょう。
肺がん以外の死亡率が高いがん

肺がんは死亡数が最も多いがんですが、死亡率の高いがんはほかにもあります。ここからは、2023年のデータをもとに、大腸がん、膵臓がん、胃がん、肝臓がんの死亡率や死亡数、傾向を解説します。
大腸がん
大腸がんは肺がんに次いで2番目に死亡数が多いがんであり、2023年の大腸がんによる死亡者数は男女計で53,131人、人口あたりの死亡率は43.8人です。*1
男女別では、男性は死亡数27,936人(死亡率10万人あたり47.4人)、女性は死亡数25,195人(死亡率10万人あたり40.4人)であり、男女ともに高い値です。
がんが大腸や周辺のリンパ節にとどまっているステージ3までの治療成績は決して悪くなく、ネット・サバイバルは1期で92.3%、2期で85.5%、3期で75.5%です。*2
しかし大腸から離れた臓器への転移がある4期では18.3%と、急激に生存率が低くなる傾向があります。
*2 院内がん登録生存率最新集計値:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
膵臓がん
2023年の統計によると膵臓がんによる死亡者数は40,175人(男性19,859人、女性20,316人)、人口10万人あたりの死亡率は33.1人(男性33.7人、女性32.6人)で、全がんの中で3位の多さです。*1
2021年の膵臓がんの罹患数は45,819例と、全がん(988,900例)の4.6%ほどであるにもかかわらず死亡数が多いことから、予後が悪い(余命が短い)傾向にあるといえます。*2
膵臓がんは初期症状が乏しく、発見したときには進行しているケースが多いがんです。この早期発見の難しさが、膵臓がんの死亡率の高さの一因であると考えられます。
胃がん
胃がんはかつて日本人のがん死亡原因の上位を占めていましたが、食生活の変化や検診の普及により死亡率は徐々に低下しています。それでも2023年には38,771人(人口10万人あたり32.0人)が胃がんで亡くなっており、全がんの中で4位の死亡数です。
死亡数を男女別に見ると、男性25,325人、女性13,446人と男性に多いがんです。ネット・サバイバルはステージ1期なら92.8%と全がんの中でも予後がよい(余命が長い)方ですが、2期で67.2%、3期で41.3%、4期で6.3%と、進行するにつれて生存率が大幅に下がります。*2
*2 院内がん登録生存率最新集計値:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
肝臓がん
2023年の統計によると、肝臓がんによる死亡者数は22,908人(男性15,226人、女性7,682人)、死亡率は人口10万人あたり18.9人(男性25.8例、女性12.3例)と、全がんの中で5番目に死亡数が多いがんです。*
肝臓がんは、膵臓がんと同様に進行するまで自覚症状がほとんどありません。そのため発見が遅れやすく、死亡率の高さに影響していると考えられます。
肺がんの主な原因

肺がんは、全がんの中でも罹患者数が多いがんです。肺がんの発症リスクを高める原因を知り、早期発見に努めましょう。
喫煙と受動喫煙
喫煙は、肺がんのリスクを上げる主な要因と考えられています。非喫煙者と比較したときの喫煙者の肺がん発症リスクは、男性で4.4倍、女性で2.8倍になるとされており、たばこを吸っている年数が長く、量が多くなるほどリスクは高まる傾向があります。*
また、喫煙者本人だけでなく周囲の人がたばこの煙にさらされる「受動喫煙」でも肺がんの発症リスクは高まると考えられています。
* 肺がん 予防・検診:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
アスベストなど有害物質による影響
アスベスト(石綿)やコールタールなどの有害物質へのばく露も、肺がんのリスクを高めます。
特にアスベストは、以前は建設業や造船業などの現場で使用されていました。アスベストによる肺がんや悪性中皮腫などの病気には長期間の潜伏期間があるため、過去にアスベストにさらされていた可能性がある人も注意が必要です。
家族歴がある
喫煙しておらず有害物質へのばく露もない人でも、肺がんを発症するケースはあります。特に、血縁関係のある家族・親族に肺がんにかかった人がいる場合は、肺がんになりやすい傾向があるとされています。
家族歴があると肺がんになりやすい要因としては遺伝的な要因のほか、生活環境が似ているといった環境要因も影響していると考えられています。
肺がんの初期症状

肺がんは、進行するまで明確な自覚症状が現れにくい病気です。症状が出たとしても、風邪などと勘違いして見過ごされてしまうケースもあります。この章では、肺がんの代表的な初期症状と受診のポイントを解説します。
長く続く咳や痰
肺がんの初期症状としてよく見られるのが、長期間にわたって続く咳や痰です。風邪などの感染症でも咳や痰は出ますが、2週間以上改善しない場合や繰り返す場合、痰の色や量に変化がある場合は医療機関を受診しましょう。
息切れや胸の痛み
息切れや胸の痛みも、肺がんの症状の一つです。運動するとすぐに息切れするようになった、深呼吸や咳の際に胸に痛みを感じるといった症状がある場合、仮に肺がんでなくても呼吸器や心臓に何らかの異常がある可能性も考えられます。放置せずに医師に相談しましょう。
血痰(けったん)
血の混じった痰(血痰)は、肺がんの初期だけでなく進行してからも見られる症状の一つです。真っ赤な痰はもちろん、少し血が混じっている程度の血痰でも速やかに受診しましょう。肺がん以外にも、気管支炎や結核などほかの病気の可能性も考えられます。
肺がんの検査方法

肺がんの早期発見のためには、定期的な検査が不可欠です。ここでは、肺がんの発見・診断のための検査方法を解説します。
肺がんを調べる検査の種類
40歳以上の人は1年に1回の肺がん検診が推奨されており、公費の補助を受けられます。肺がん検診では対象者全員にスクリーニングとして胸部X線検査を行い、高リスクと判定された人は痰を採取して成分を調べる喀痰細胞診も行います。
胸部X線検査などで肺がんが疑われた場合、胸部CTでより詳細に検査します。さらに異常が見つかったら気管支鏡検査やCTガイド下生検で肺の組織を採取し、顕微鏡で調べて診断するのが一般的です。
肺がんを早期発見するがん検査の理想の流れ
肺がんを早期に発見するためには、一次スクリーニングでがんの有無の可能性を判定し、二次スクリーニングでがん種を特定、さらに医療機関での精密検査で診断する流れが理想的です。
一次スクリーニングは、体への負担が少なく金銭的・時間的に続けやすい方法で、自覚症状のない人に対して行われる全身のがんの有無を調べる検査です。尿検査や唾液検査などの種類があり、痛みがなく手間も少ないため、痛みが苦手な人や忙しい人でも続けやすいメリットがあります。
ただし、一次スクリーニングではがん種の特定はできません。一次スクリーニングの結果で異常が見つかった場合は、二次スクリーニングや精密検査を必ず受けましょう。
定期的な一次スクリーニングで肺がんを早期発見しよう

肺がんは全がんの中でも死亡者数が多く、死亡率も高い傾向があるがんです。できるだけ初期のうちに発見し、早期治療につなげましょう。
がんの早期発見のためには、手軽に全身のがんの有無を調べられる一次スクリーニングが効果的です。続けやすい方法で定期的に検査を受け、異常が見つかった場合は速やかに二次スクリーニングや精密検査を受けましょう。